長谷川一夫
入江たか子 黒川弥太郎
高峰秀子 月田一郎
脚本 観世光太
監督 マキノ正博
昭和16年度作品
阿波踊りの興奮を背景に描く復讐劇
冤罪に散った兄のために弟が帰って来た
阿波の徳島。廻船問屋の十郎兵衛は家老広幡に海賊の汚 名を着せられ、年に一度の阿波踊りの日に捕えられて処 刑された。それから七年、今年も踊りの日が近づくと行 方不明になっている十郎兵衛の弟が帰って来て、必ず兄 の復讐をするとの噂が流れた。船宿には怪しげな三人組 が泊り、かつて十郎兵衛の弟と許嫁であった土地の豪農 の娘も帰って来た。そしてある夜、家老の屋敷の門に十 郎兵衛不日参上と書かれた貼紙が......。
発売元 東宝株式会社/〒100 東京都千代田区有楽町1-2-1 TEL 03(591)5044(代)
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一に
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解説 浄瑠璃等で知られる「阿波の鳴門」 からヒントを得た作品である。徳島名 物阿波踊りのシーンをクライマックス に、海賊の汚名を着せられた兄のため に復讐を遂げる波瀾万丈の大活劇が展 開する。
山上伊太郎の原作を得て、この手の 時代劇を撮らせたらあざやかな語り口 を見せるマキノ正博が監督、ここでも 全編快調なテンポで展開し、みごとな テクニックを駆使している。
しかも主演は「昨日消えた男」「家光 と彦左」等でマキノと組んで来た長谷 川一夫。 二枚目ナンバーワンであり、 優雅な殺陣を見せる時代劇スターとし ての人気も実力もなかなか高い役者で
ある。マキノとのコンビはこのあとも 「男の花道」「待って居た男」「婦系図」 と続いていくことになる。
さらにこの作品は共演者が非常に豪 華である。長谷川と「藤十郎の恋」で もコンビを組んだ入江たか子。「秀子の 応援団長」などでアイドル的人気も高 い高峰秀子。長谷川と時に相棒として、 時に敵役として多くの作品で顔を合わ せている黒川弥太郎。「燃ゆる大空」な どで人気上昇の月田一郎。コメディ的 役どころの清水金一など。
なおこの作品は、戦後再公開時に「剣 雲鳴門しぶき」と改題された。
◎本商品は保存原版からの最良の状態で製作し ておりますが、映画公開時より長い年月を経て おりますので、一部作品にはお見苦しい場面も ございます。あしからずご了承下さい。
阿波の踊子
(剣雲
鳴門しぶき)
東宝
彼を慕う高峰秀子の清純さといい、黒 川弥太郎たち浪人の無邪気なまでの快 活さといい、すべての人物がいわば真 っ白な心を感じさせる。なるほど、そ れこそが阿波踊りの精神ということか。 ところがこの映画、封切り当時の批 評を読むと、ひどく不評である。書い た人は明らかに面白さに乗れなくて、 理屈をこねて悪口を並べている。たし かに理屈に合わないところは随所に見 られるが、むしろだからこそ、映画な らではの魅力があふれかえっているの ではなかろうか。
この映画は、のちに同じマキノ正博 (雅弘)により、大友柳太朗主演「阿 波おどり・鳴門の海賊」(一九五七)と してリメークされている。
山根貞男のお楽しみゼミナール
「阿波の踊子」のクライマックスはむ ろん阿波踊りのシーンで、ラスト、 大 群集が橋上から出発して津波のような 群舞をくりひろげるさまは、まさに圧 巻である。
この徳島名物・阿波踊りは、しかし、 この映画がつくられた一九四一年当時、 戦争中ということで禁止されていた。 それを映画の撮影のために、徳島の人々 の協力のもと、大々的に復活させたの である。群舞シーンにあふれる活気は、 そのまま人々の喜びの表現にほかなら ないといえよう。
「阿波の踊子」では、その阿波踊りの 真只中で復讐劇が演じられる。当時の
資料によると、踊りの夜の復讐という 点は「三仮面」(一九二一)というフラ ンス映画にそっくりらしいが、マキノ 正博のほかの作品にも、踊りとお面と 闘いとを重ね合わせた描写はよく見ら れるから、もともと大好きだったので あろう。これは戦後の作品だが、鶴田 浩二岸恵子の「弥太郎笠」(一九五二) でも、村祭りと踊りとお面が印象深く 描かれ、それに合わせて闘いがくりひ ろげられる。
それにしても「阿波の踊子」という 映画は、復讐のドラマとはいえ、なん と明快に楽しいことか。長谷川一夫の 美男ぶりの爽やかさはむろんのこと、
■キャスト
長谷川一夫 黒川弥太郎 入江たか子 高峰秀子 月田一郎 清水金一 鳥羽陽之助
帰って来た男 髯先生 お市様 お光ちゃん 尺八先生 道八旦那 目明し権蔵 市野仁右衛門 汐見 洋 十郎兵衛 清川荘司 おきよさん 清川虹子 おますさん 沢村貞子 親 仁 横山運平 海上丸船長 高堂国典 進藤英太郎 沢井三郎 三田国夫
阿波屋徳平
牢 番 向山陣内
広幡平左衛門 瀬川路三郎 家老邸門番 冬木京三 船宿表の人 永井柳筰
船宿表の人 石川冷 船宿表の人 長島武夫
■スタッフ 制作 滝村和男 永室徹平
脚本 観世光太 監督 マキノ正博 撮影●伊藤武夫 立花幹也 録音 岡崎三千雄 美術 北村高敏 照明 井上栄太郎 音楽 飯田信夫 編集畑房雄
TND1605 昭和16年度作品 71分・モノクロ