■はじめに
当アンプは送信管「829B」にサウンドパーツ殿の「パーマロイコア・グリッドチョーク」を前段・出力段共に
使用したプッシュプル・ステレオアンプです。
多極管の常道である「負帰還」を使用せず、ボン付き・ドンシャリなく繊細な高音から迫力のバスドラム
まで見事に再現するアンプに仕上げました。
ずんぐりとした送信管は上部にプレートピンが2本出ている個性的な形状をしており、なかなか見栄えの
ある球です。
アルミ化粧リングと簡略アナログVUメーター(LEDバックライト付)を左右チャンネル分設置し、見て
聞いて楽しいアンプです。
真空管は全て新品・未使用品です。
■増幅回路
入力VRを経て初段グリッドチョークで位相反転を行うダブルプッシュプル型式になっており、6AQ8にて
信号増幅を行います。(6AQ8は双極マッチセレクト品を使用)
特性表から最良点を探り、通常オペレーションより電流を流して低域の再現力をより強くしました。
出力管カソードパスコンにはSuprag-ATOMを、カップリングコンデンサは明瞭で素直な音の再現に定評
のあるASCフィルムコンデンサX363シリーズを使用。信号方向性まで拘りました。
■出力回路
送信管829Bは過酷な使用にも耐える様、堅牢で分厚いガラスバルブ構造の双極管で、2.5Aの
ヒーター電流と大型カソードにより電圧変動が生じても安定した動作が期待できます。
メーカーはバルブの作りが美しい「CETRON」を使用しました。
発振防止にグリッドへDEALの金属皮膜抵抗をいれました。
この球はスクリーングリッドの電圧制約があるので、定格内に収まる様に高耐圧トランジスタによる分圧回路
を構成しています。
プレート電流は75mA、電圧は300V程度でバランスを取り最大プレート損失内に収めています。
カソード抵抗はあえて90Ω2本を直列接続にし、発熱の分散を行っています。
送信管特有の直進性の優れた音に加え、グリッドチョークと大型オリエントコアの出力トランス、ASCフィルム
コンデンサによりバロックからジャズ・ボーカル・イージーリスニング迄幅広いジャンルに適応します。
出力は約10Wに抑え、AB級動作に移行してグリッドチョークのパーマロイコアが磁化されない様にしています。
■整流回路
交流250Vより、センタータップ両波整流で高圧ファーストリカバリダイオードを経てSiC高耐圧MOSFETによる
半導体リプルフィルター回路を構成、簡単な回路ながら確実にリプル成分の除去を行っています。
前述の通り829Bスクリーングリッドへの給電には高耐圧トランジスタによる分圧回路を構成しています。
VUメーター回路は電源ON時の過度現象による指針振り切れ対策として簡単なソフトスタート回路を構成
しています。
■その他
ケースは天板・底板に2mm厚のアルミを使用。
底板は放熱対流用に数か所丸穴を開口し、熱の停滞を防止しています。
ケース前面にRCA入力ジャックプレートとVUメーター・「黒檀のボリュームツマミ」を、ボリュームはクリック感のある
アルプス製を使用しています。
アンプ本体・真空管(829B・6AQ8)の他に取扱説明書、電源ケーブル、予備ヒューズ2本が付属します。