中古で入手したオーディオ機器や機械式カメラのメンテナンスやリペアを趣味で行っています。
1975年発売、TEAC製ステレオカセットデッキA-400です。約1年ぶりの出品です。
いろいろなオーディオ製品を見ていると、時々「どうしてこんなレイアウトにしたんだろう?」と思うような製品に出会うことがあります。カセットデッキではヤマハTC-800/TC-800GLとこのTEAC A-400およびA-420(A-400の後継機)が際立っています。TC-800/TC-800GLは著名デザイナーによる縦でも横でもない「斜め」という独特のスタイルで、そしてA-400/A-420はカセットリッドが玄関のドアのように横に開き、そこにテープを横から入れるという摩訶不思議な装填方法で、そのキワモノっぽさから中古市場では意外と(失礼!)人気の高いモデルです。
【入手時の状態】
通電のみ確認、他は未確認というジャンク品の定番の説明とともに入手しました。
電源を入れるとカセット照明は点灯するものの、メーター照明が左右とも点灯しません。
操作ダイヤルをPLAY位置に回すと、テープは走行しませんが中からモーターの回転音が聞こえました。
どうやらモーターは生きているようです。まずはここから整備を行います。
【整備内容】
立派な作りの木製キャビネット(安物の組立家具のような木目プリントではなく本物の木です。)を開けて内部を見ると、やはりキャプスタンベルトは加水分解で切れて、いわゆる塩こんぶ状態でバラバラになっていました。リールベルトとカウンターベルトは切れずに残っていましたが、伸びと硬化が進んでいてこちらも要交換です。
フライホイールとモーター側のプーリーにこびり付いた「塩こんぶ」を丁寧に除去し、表面を綺麗に清掃して新品のキャプスタンベルトを装着しました。モータープーリーを外したついでにモーター軸にはスピンドルオイルを注油しました。
リールベルトとカウンターベルトはプーリー溝のゴムカスを無水アルコールで洗浄し、こちらも新品ベルトを装着しました。(画像4)
ベルト交換によって駆動系は作動するようになりましたが、テープを入れて操作ダイヤルをPLAY位置に回しても、1秒ほどでカチン!とソレノイドが作動して再生が止まり、TAPE STOPランプが点滅してしまいます。早送り、巻き戻しも同じです。
これは昨年出品したA-400でも経験しており、テープカウンター軸のマグネットの回転によってテープの走行・停止を感知するセンサーの感度低下が原因です。前回はセンサーの取付金具を曲げてマグネットに近づけることで対処できましたが、今回はいくら近づけても変化ありません。よく見るとセンサーのガラス管が割れています。
通常ならここでジ・エンドですが、実はこのセンサーは私が得意にしているヤマハTC-800シリーズでも同じ部品が使われており、不良になった時にあちこちの部品店を探してようやく手に入れた貴重な新品がありますので、今回特別にそれを使用しました。画像5に見える左右にハンダ付けされた細長い部品が回転センサーです。
これでやっとテープが再生できるようになりましたが、再生してみると右chからまったく音が出ません。メーターも振れません。一難去ってまた一難です。
まず怪しいのは基盤上の回路を再生と録音に切り替えるスライドスイッチの接触不良で、接点復活剤を処置してON/OFFを繰り返しましたが変化なし。ヘッドからの配線の断線や基盤のハンダ切れもありません。これは困りました。
そこでテスターでヘッドからの信号を上流から下流に順に辿り、どこで信号が途切れるかを確認したところ、ドルビーICの下流で信号がゼロになりました。このデッキのドルビーICはソケット式になっているので、試しに左右のICを入れ替えてみると見事ビンゴ!不具合chが左右入れ替わりました。右ドルビーICの不良確定です。
使われているのはNE545BというICですが、普通こういうのはドルビー社のライセンス品で一般には市販されていないはずです。ダメもとで検索してみると、なんと新品を扱っている店がありました! 1個売りの店と2個売りの店があり、今回必要なのは右ch用の1個ですが、左右の音質を揃えるために2個売りの店からセット品を購入しました。
交換の結果、左右chとも再生可能になりました。音質も古いドルビーICより明らかにクリアーです。先ほどの回転センサーといいこのドルビーICといい、こうした部品が今でも手に入る日本は本当に素晴らしいです。
切れていたメーター照明ランプも新品に交換しました。最近はこうした照明をLED化する方もいますが、アナログメーターにLED照明は野暮というものです。柔らかい電球の光こそアナログメーターに似合います。(画像7・8)
この状態でしばらくテープを再生して各部を馴染ませた後、315Hzの基準信号が録音されたテストテープを使ってテープ速度を基準値に合わせました。カセットデッキでは駆動ベルトを交換するとテープ速度が変わるので、必ずこの方法で正しい速度に再調整が必要になります。勘でやるなど論外です。(画像9)
なお画像9のスマホ画面の下に赤い横線が見えますが、これが上下にギザギザせず一本線なのは音揺れ(モーター回転ムラ)がない証拠です。ご覧の通りなかなか優秀です。
ヘッド、キャプスタン、ピンチローラー、早送り・巻戻し用アイドラーはそれぞれ専用のクリーナーでクリーニングしました。ヘッド消磁も実施済みです。これだけでも高音の伸びが良くなります。
実際にアンプに繋いでみると、キワモノっぽい外観とは裏腹になかなか良い音です。
ガチャガチャ操作する2つのダイヤルノブも楽しいです。少し見直しました(笑)。
以上でメンテナンスは終了です。
【外装クリーニングについて】
整備時にフェイスパネルやツマミなどすべての外装部品を外すので、一つ一つ汚れを落として綺麗にしました。
この時代のオーディオ製品はフェイスパネルやスイッチ、ツマミ類にプラスチックを使用していないので、丁寧に汚れを落とすとここまで綺麗になります。
木製キャビネットは家具用クリーナーで汚れを落としました。アナログメーターと木目キャビネットが実にいい感じです。
オーディオは音も大事ですが見た目も大事です。
【付属品について】
即決価格にて落札いただいた場合は画像の取扱説明書が付属します。原本から複製したものです。
この取扱説明書は表紙をめくると中に新聞紙サイズの大きな紙が折り畳んであります。
このような大きな紙は一枚で複製できませんので分割して複製してあります。
このデッキはテープセレクターがBIAS、EQとも1・2としか表示されておらず、どの種類のテープを使う時にスイッチをどう切り替えるのか取扱説明書がないとまったく不明です。ぜひ即決で入手して下さい。
【支払いおよび発送について】
埼玉県からゆうパック着払いで発送します。仕事の都合で発送が遅くなる場合があります。
お急ぎの方はご注意ください。
入札は落札後24時間以内に支払い完了出来る方のみお願いします。
このサイトには落札したまま取引きせずに放置したり、間違い落札でしたと安易にキャンセルを要求してきたり、支払い期日になって給料が遅延だの家族が入院だのと何度も支払いを引き延ばし、最後はお互い評価なしでキャンセルさせてくれと言ってくる悪質な落札者がいます。
落札は購入権利の獲得ではありません。購入義務です。
落札後24時間を過ぎても支払いがない場合は落札者都合で削除し「非常に悪い」の評価を付けます。システム変更により自動で付かなくなったので手動で付けます。
報復評価があった場合はそれも評価欄に記入します。
【保証について】※必ずお読みください
当方プロの修理業者ではありませんので保証はありません。
たいへん古い機械ですので、今回の整備箇所を含めて出品時点では正常に作動していても、この先いつ・どこが不調(寿命)になるかは予測出来ません。輸送中の振動で不調になる場合もあります。
またメーカーの修理部門のようにすべての機能や性能をチェックしているわけではありません。
見落としや新品時の性能・特性が出ていない場合もあります。
到着時に通電しない以外はクレームや返品・返金は対応いたしませんので、納得いかない方はトラブル防止のため入札しないようお願いします。入札された時点で納得いただいたと判断します。
個人オークションは個人の不要になった品物を現状でお譲りするもので、中古オーディオ店の通信販売ではありません。
この2つの区別がつかない方、数十年前の中古品に新品と同じ状態を求める方、自分の要求ばかり一方的に押し付ける方は入札をお断りします。専門店で保証つき商品をお求め下さい。