縦:約60mm
横:約48mm
作者:-(アンティーク)
QR:アーティスティッククオリティ
今回は言わずと知れたイギリスの劇作家であるウィリアム・シェイクスピアがモチーフとなったカメオですが、実はカメオの世界においては意外と見かけないシェイクスピア。
古代から近世までの文化人をモチーフとしたカメオ自体はそれほど珍しく無いのですが、大体の場合は小ぶりなカメオをつなげたブレスレットやネックレスのモチーフとして描かれ、ソクラテス、ダンテ、ダ・ヴィンチなどと並んでひとまとまりの作品となっている印象があります。
また文筆家が単独で描かれる場合、ほぼ同時代に早世の天才として知られたジョージ・ゴードン・バイロンが大変に人気だったようで、ブローチ等で見られるのはこのバイロン卿を描いたものが多いです。
そんなこんなで意外と少ないシェイクスピアなのですが、今回コンクシェルの厚みを用いたポートレート風の作品が見つかりました。
コルネリアンやサルドニクスと異なり色の層がないので絵画的表現ができない代わりに、これらの一般的なカメオシェルに対して厚みと色の安定性で勝り、彫刻的な表現において優れるコンクシェルを用いた本作では、17世紀によく用いられたつば広帽やカメオではあまり描かれない斜めからのアングルの顔をその厚みを活かして表現しております。
さすがにノト作と比べてしまうと見劣りしますが、そうはいってもガロファロ作やグアラチーノ作よりやや落ちるくらいの造形といったところでしょうか。
また大きさがあるのはシンプルにプラス評価で、この感じだったらアクセサリーにするよりも小さな額に収めてインテリアにするとちょうどいいのではないかと思います。
貝は色の淡いコンクシェル。
コンクシェルにはとげが丸っこくて殻が非常に分厚いタイプと、とげが尖っていて殻が薄めなタイプがありますが、これは後者を素材にしたものとみます。
ちなみに私も勉強のためコンクシェルを取り寄せて加工してみたことがありますが、非常に硬くて全然刃が効かず、少し削るにも大変に苦労しました。
先述の通りカメオ全体からするとそこまで出来がいい作品ではないものの、そうかといって簡単に作れるのかといえば決してそんなことは無い作品です。
状態はまずまずで、画面10時位置をはじめヘアラインが散見されます。